こんにちは、房総イズムです
快適な家は断熱の性能が高い家です。この断熱性能の中には、窓の性能も含まれています。断熱と言うと断熱材の種類を吟味する方達は多いのですが、もっとも熱的に弱いのは、窓の開口部、この部分をしっかり断熱補強してあげないと快適な住まいにはなりません。この窓に関しては海外よりも遅れているのが日本の基準。そのあたりからお話ししてみましょう。

窓の性能 〜遅すぎた窓の断熱性能 UA値を感覚で〜

冬、エアコンをつけていても家の中の熱はドンドン逃げていきます。ズバリ!窓から。
夏、エアコンをつけていても家の中に熱がドンドン入ってきています。ズバリ!窓から。

窓の基準を、海外と比較してみる

私たちが住んでいる日本は、技術的に見ても経済的に見ても先進国です。
しかし、住宅の温熱環境という面で見れば、途端に発展途上国の仲間入りです。
特に、窓(=サッシ)の性能に関しては、欧州諸国と比べて大きく遅れを取っていると言うしかありません。

UA値で見る、海外の基準の窓と日本の基準の窓の違い

例えば、温熱環境の先進国ドイツでは、窓の断熱性能の基準を法律で定めています。
ドイツは国内全土でUA≦1.3です。このUAは熱貫流率と言い、この数値が小さいほど断熱性能が高い窓であることを表します。

他にも、アメリカは地区によりますが、最高で
UA≦1.7
中国では
UA≦1.6です。

さて、日本の場合はどうでしょうか?残念ながら、日本では推奨値が最高でもUA≦2.33と、世界的に見て大きく遅れを取っているの現状なのです。今日流通している標準的なアルミサッシの断熱性能が、UA=3.5前後であることを考えても、他国からの遅れがよくわかります。

そして、この性能の差を埋めようとする動きが、近年ようやく活発になってきました。サッシメーカー各社が、断熱性能の高いサッシを次々と発表してきたのです。

みなさんも知っている大手のメーカーさんでお話ししますと、(サッシの開き方でも異なります)
例えば、LIXILさんであれば、従来のデュオPG(UA=3.49)に対して、

・サーモスX(UA=1.05)
・エルスターX(UA=0.79)
・レガリス(UA=0.55)

そして、YKKapさんであれば、エピソード(UA=3.49)に対して、

・APW330(UA=1.03)
・APW430(UA=0.79)

UA値を感覚的に把握する

UA値の性能競争は、これからますます激しくなることでしょう。とは言っても、UA値はイメージが沸きづらい分野。

簡易的にイメージするとこのような感じです。

断熱材(グラスウール100mm)を入れた壁 → UA値=0.35
コンクリート200㎜の打ちっ放しの壁→ UA値=8
木材10cm→ UA値=1.5
たとえば、レガリス→UA=0.55をグラスウールに置き換えると63mmということになります。
一方、デュオPG→UA=3.49グラスウールに置き換えると10mmということになります。

窓は熱が逃げる場所なんです…。だから壁の断熱材ばかり、いっぱい入れても窓の性能を上げないと意味がありません。

一番性能の良いサッシでも、ビッシリ断熱材が入っている住宅の壁よりも良いというわけではないのです。今回、そのサッシづくりの最前線を見学できるということで、石川県金沢へ行ってまいりました。

工場見学 〜2020年『省エネ基準適合住宅の義務化』へ向けて〜

金沢市街からバスに揺られること30分。どこまでも続く田園風景の中にLIXIL小矢部工場はあります。ここは主に、サッシのパーツを原料から形成している工場です。アルミサッシは元より、断熱性能が高い樹脂サッシのパーツもここで作られています。

サッシというと今ではアルミサッシが一般的であります。しかしアルミサッシは、製品寸法良さや重量が軽い、さびないなど、大変優れた商品である一方、熱が通りやすいのが弱点。

その弱点を補うものとして、樹脂を利用し始めたわけであります。アルミ+樹脂は、良いころをミックスさせたサッシといえるでしょう。もちろん欠点もありますがそれは次回。

木製サッシも断熱性能の良いサッシとして注目したいところです。木製サッシは、アルミよりも熱を通しにくいので、断熱性には有利ですが、高価な商品です。

でも見た目の高級感、製造エネルギーの少なくエコ商品といった付加価値があるので、今後も注視したいサッシです。

話を戻します。

窓の制作工程

樹脂サッシの原料となるのは、『塩化ビニル樹脂(通称:塩ビ)』と呼ばれるプラスチックです。塩ビは他のプラスチックと比較して生成に必要な石油の消費量が少ないため、環境に優しいプラスチックとされています。

樹脂サッシのパーツを造る工程はあっという間に終わります。工場の中は写真撮影禁止ですので、スケッチを描きます。

塩ビを仕上げの色に着色したペレットを溶解炉へ入れると、それぞれパーツの断面が形成された状態で押し出されてきます。あとは冷却してカット、梱包されて組立工場へと運ばれていきます。見学しながら工場の担当者がこんなことを話してくれました。

「今こうしてどんどん樹脂サッシを生産してはいますが、現在の日本の樹脂サッシ普及率は、アルミとの複合サッシを入れても37%しかありません。2020年へ向けて、これから樹脂サッシの普及率も上がっていくものと考えております。」

そう、これらメーカーの断熱性能を上げたサッシを普及させようという動きは、2020年に予定されている『省エネ基準適合住宅の義務化』への準備なのです。

平たく言えば、2020年に『住宅における省エネルギーの最低基準が法律で定められる』ため、断熱性能が悪い従来のサッシに変わる製品を準備しておこうという配慮なのです

この省エネ基準は、2020年以降、日本の住宅のスタンダードになります。

それはつまり、従来のアルミサッシで建てられた住宅が規格外になり、将来の資産価値が大きく下がる可能性があるということです。今、建てた住宅が4年後にガラクタ扱いされる可能性も0ではありません。

これから家づくりを考えている皆様にとっては、省エネルギーは家計に優しいという以外にも、家の資産価値を守るという意味でサッシの選択がより重要になってくるのです。

追伸

開口部の断熱性は非常に重要なことがわかって頂けたかと思います。壁の中の断熱材だけでなく、開口部にも目を向けてみましょう。コスト的に厳しければ、断熱カーテンも選択肢に上がります。房総イズムではそういった内容も踏まえて断熱仕様を提案しています。