こんにちは、房総イズムです。
今回は、難しい記事です。玄人や、本気で家づくりを考えている方に読んで頂きたい内容です。折角の新築だから、家は高性能の方が良いという方は沢山いらっしゃいます。高性能とは、どこまでの事を言うのでしょうか??これは難しいですね。その時代に応じて、高性能の基準は変わっています。少し前はペアガラスだって高性能だったのに、今ではトリプルガラスのサッシも普通に商品化されています。
外皮性能を示すUA値と言うのが今では建物の性能を語る指標になっています。ではどのくらいの性能を目指せば良いのか。コスト施工性を元に千葉で建てるならと言う事でお話しします。

UA値の目安は、どこまで?設計・施工の両面から精査する

(ものすごく長い文章です。しかも専門性の高い文章です。ですが参考になると思いますのでよろしくお願いします)

UA値とは??

建物は冬暖かく!!これは皆さんの要望で上位にきます。建物の断熱性能は、もちろん高い方が良いです。その目安となる数値をUA値として現しています。

UA値(外皮平均熱貫流率)とは、住宅の断熱性能を表した数値で、各部位から失われる熱損失を合計して、外皮の面積で割って求めています。つまりこの数字が小さいほど断熱性能が良い家と言えます。

外皮とは、外部と内部の熱的境界のことで、屋根・天井・壁・床・ドア・窓などのことです。ちなみに換気による熱損失は考慮されていないので、純粋に建物の性能と考えられます。

屋根と言っても、屋根断熱なのか、天井断熱なのか、また、床と言っても、床断熱なのか、基礎内断熱なのか、基礎外断熱なのか、その建物の断熱ラインによって、熱的境界は異なってきます。あくまで建物の性能の数値なので、換気などの熱損失は考慮されていないので実生活とは少し異なります。

換気での熱損失も多くあるのですが、それはまた後日。。

ηA値とは

UAと共に、ηA値も外皮の性能を決める一つの大事な基準です。ηA値とは冷房期の平均日射熱取得率のことで、窓から入るエネルギーもこれ以下にしてね、という事です。

夏場、家を留守にして、夕方家に帰ってくると、うぁ・・蒸し暑い!!!なんてことを体験されたことがある人は沢山いると思います。

日差しのエネルギーはバカにできないくらい大きくて、夏場は特に不快になります。

窓から日射のエネルギーが入って、しかも断熱性能が高いと、日射のエネルギーの逃げ場が無くて、ある意味ビニールハウス状態になって、蒸し風呂のようになってしまいます。

断熱性能が高さを目指すのであればとにかく日射の対応もセットで考える必要があります。

だから、この基準を設けています。一方、寒冷地では、太陽のエネルギーも家の中を暖かくするのに必要な事なのでこの基準は設けられていません。

日本は、暑い地域から寒い地域まで様々あるので、それぞれの基準があるのです。

UA値の基準

UA値は数字で表されるので、もちろん基準があります。

東京や千葉沿岸地域であれば、6地域にあたるので

平成25年基準 UA値0.87以下、ηA値2.80以下
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス 支援事業  UA値0.60以下、ηA値2.80以下
HEAT20 G1 UA値0.56以下、ηA値2.80以下
HEAT20 G2 UA値0.46以下、ηA値2.80以下

それぞれ、必要な性能値をそれぞれの基準で決めています。25年基準は、今では最低基準と言えるでしょう。ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスはZEHと言われる住まいで、ゼロエネルギーを目指すならこのくらいは担保してねというイメージです。さらにHEAT20は長期的視点に立ち、住宅における更なる省エネルギー化をはかるための基準で、更に上位の基準になります。

基準はわかったけど、実際の住まいで断熱性能にすれば良い??

UA値0.87

ここからは実際の住まいの話にしましょう。平成25年基準 UA値0.87は、現在の新築住宅、注文住宅と言われる住まいでは、少し断熱材に気を使えば問題なく出てしまう数値です。むしろ注文住宅で平成25年基準をクリアしているのは営業トークにもならないと思います。建売でもこのくらいはクリアしてしまうのが一般的だと考えておいた方が良いでしょう。

UA値0.60

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス 支援事業のUA値0.60をクリアしようとすると、皆さんが気にする壁の断熱材だけでなく屋根・天井・床・基礎の断熱のグレードアップも考える必要があります。例えば、同じ断熱材でも熱伝導率の良い商品に変えるなど。。

例えば、グラスウールでも、少し前は10Kと言われて熱伝導率が0.050W/(m・K)程度が主流でしたが、その後、高性能グラスウール16Kと言う商品が出てきて0.038W/(m・K)程度に進化し、更に近年はその上の、20Kという商品で0.034W/(m・K)も登場してきました。

熱伝導率が0.050W/(m・K)と0.034W/(m・K)を比べると、
3.5寸の柱間に入れると想定して105㎜だとすると0.034W/(m・K)の断熱材なら72㎜で同じ性能と言うことになります。

このあたりで、0.87よりもコストアップは必要になりますが、こういった同じ材料で、性能値が変わるだけの変更を行えば、施工性が変わることがないので、施工金額としての影響は少ないでしょう。

UA値0.46

セルロースファイバーの施工状況:外皮のUA値の目安

HEAT20のグレードですが、こちらは、断熱材を、フェノールやウレタンなどの、高性能なものにする必要があります。こういった断熱材の熱伝導率は0.020W/(m・K)近辺の商品を使うようになります。

さらに断熱材にも、厚みが必要なので、コストは上がります。

またグラスウールやセルロースなど熱伝導率が0.045W/(m・K)近辺の断熱材を用いる場合は、それ単体の充填断熱では正直厳しいのがUA値の計算結果で出ています。そのため、断熱材の厚みを稼ぐために、充填断熱+外張り断熱のダブル断熱をする必要もあります。工事の立場から言えば、充填断熱で可能なのか外張り断熱が必要なのかは、工事工程も変わるので、大きなコストアップの要因になります。

外張り断熱は、ロックウールを用いる場合や、板状断熱材(フェノールフォーム・押し出法ポリスチレン)を用いる場合といくつかありますが、外張り断熱は、雨仕舞で、工事の熟練が必要なので、初めての施工会社は気を付けたいところです。

ダブル断熱の外張り断熱実例:外皮のUA値の目安

重要な要素、サッシ

サッシは、断熱材よりもある意味重要です。窓は、断熱材を入れる事が出来ないので、性能が低くなってしまいます。このあたりのサッシの断熱に関する記事はこちらを参照してください

ペアガラス、トリプルガラス、それ以上のファイブガラスのものすごい高性能なサッシでもやっとグラスウール100㎜程度の断熱性能になるのです。

こういったファイブガラスくらいになってしまうと、ガラスの重量も、施工性に影響を及ぼします。大開口の開口部は、人力でガラスを持ち上げることが難しくなる可能性もあります。また窓台もサッシの垂れがないように補強も必要になるでしょう。千葉であれば、価格や施工性、環境を考慮してここまで必要ないと思いますが、サッシの性能は、断熱以上に配慮が必要な部材なのです

UA値の性能だけを上げようとするのであれば、極論、ガラスなんてないほうが良いのです。

でも窓には通風採光など性能値以上の価値があるので、ここはUA値とにらめっこしながら考えて見ましょう。

UA値の海外との比較記事

房総イズム的 UA値のまとめ

まず、充填断熱だけで性能値を考えるか、外張り断熱+充填断熱で考えるかで方向性が異なります。

充填断熱:UA値0.56~0.60 W/m2K程度とUA値0.46~0.50 W/m2K程度

充填断熱だけで考えるなら現状のリーズナブルな断熱材では熱伝導率は0.050~0.038W/(m・K)くらいが相場。その場合、従来の工事方法でできるので工事コストは抑えられますが。また、断熱材をリーズナブルにしているので、サッシも、ペアガラスLow-eガラスの樹脂アルミ複合くらいの性能値の商品を使いたいところ。

比較的コストを抑えた注文住宅なら、UA値0.56~0.60 W/m2K程度を目指す形になるでしょう。

充填断熱でもさらに、性能を目指したい場合、高価な断熱材0.020W/(m・K)近辺を用いる必要があります。もちろんサッシも、ペアガラスLow-eガラスの樹脂アルミ複合の上位ランクのトリプルガラスダブルLow-eを採用したいですね。

天井断熱か屋根断熱かでも異なりますが、天井断熱の場合350mmくらい吹き込むこともあります。高価な断熱材・サッシはトリプルガラスを用いるので、その分のコストアップは考慮した方が良い。

充填断熱で、現状目指せるの性能値としては、UA値0.46~0.50 W/m2K程度が限界だと思います。

外張り断熱+充填断熱ならUA値0.30~0.40 W/m2K程度

②外張り+充填断熱で考えるなら、かなりの性能まで可能。サッシはもちろんトリプルガラス。

外張りを施工性を考え、板状断熱材として、充填断熱を、リーズナブルな商品にした場合

ダブル断熱なら、UA値0.30~0.40 W/m2K程度も目指せるでしょう

私たちの場合、いろいろ施工性を考慮すると、0.35W/m2K程度が一つのUA値の限界と考えています

あとがき、UA値の数値を追い求める怖さ

もちろん断熱材を厚くすれば、UA値は良くなります。

しかし一方で、コストアップもありますが、私たちが懸念しているのは施工性です。

柱の大きさは105mmか120mmが一般的。それ以上になれば躯体に断熱受けの桟木を組む必要がある場合も出てきます。壁を太くして断熱材を入れるしかありません。屋根断熱であれば、懐の厚みのあるので、垂木をツーバイ材を用いたりしてさらに大変な施工になります。

外張り断熱は、従来よりも外回りの工事期間が長く、雨仕舞いも配慮が必要になります。

さらに、従来のアルミサッシの場合は半外付けという納まりで雨仕舞いをしているので、外張り断熱を厚くすれば、アルミサッシの取り付けいつ位置も外にふかす必要があります。サッシもガラスが複層になり高重量化するので、以前はなかったサッシの垂れにも考慮する必要が出てきます。

もちろん、UA値を上げた高性能な住まいにするのであれば、全熱交換器などの換気システムも考慮する必要があります。日射取得の対応も必要になるので、Low-eガラスだけではなく、庇も考慮したいところです。結局のところは、高性能住宅は断熱性の+αが、建物の計画自体も大きな要素になります。

UA値を上げようとすることで、見えないリスク、見えないコストが発生するので、本当にあなたにあったコストメリットのある性能の住まいを求めてください。

UA値0.35W/m2Kの実例

追伸

さぁどうでしたでしょうか。これは房総イズム的私見が沢山はいった記事なので賛否両論あるかもしれませんが、数字と現場を照らし合わせて作った我々の理論値です。しかしながら、UA値よりも折角千葉に住むのであれば、房総を楽しんでほしい、そんな住まいの方が価値があると思います。我々はプロとして、省エネや建物のスペックの専門知識は負けませんし、お好みのスペックを引き出すことは可能ですが、もっと住まいで楽しんでほしい。それが房総イズムの願いです。