戸建て住宅の建替えは、本当に少なくなっている。

住宅の着工件数が減って、職人不足と言われて久しい今日。実際我々も現場に行くと、50代の職人さんは若手と言う感じになっていることに、この業界の危機を感じます。

今回は、戸建て住宅の建替えについて、データーを見てみましょう。

新築の着工数の変化

まず、新設の着工数は

平成7年で55万戸だったのが、平成28年には29万戸
約半分になっています。確かにグラフを見ると、毎年下落を続けているので約20年で半分になった理由もわかります。それにしても、我々業界人からすると恐ろしい数字になっています。

再建築戸数はどのような変化か??

再建築の戸数を見てみましょう。

平成7年で18.6万戸だったのが、平成28年には3.3万戸
なんと戸数だけで見てみると、再建築は5分の1以下になっています。
比率でいうと
平成7年で33.9% →→ 平成28年には11.5%
これは、平成28年は全体の10%くらいしか建替えていない事になります。新規の着工数も減っていますが、建て替えは、それ以上です。

千葉県では、着工数と建替え率はどうでしょう

今回手元にある資料が平成28年の調査結果でしたので単年で記載します

平成28年には12,425戸の新築 1,189戸の建替え    建替え率9.56%

数字が小さいので、1の位まで載せました。10%を切っていますね。

なぜ建て替えはこんなに少ないのか?

実際様々な理由はあるでしょうが、日本の建替えは築30~40年ほどで行っています。そうすると、今から20年前に建て替えを行っている建物は、戦後に建てられた建物が多かったはずです。その頃は物資も少なく建築材料もあまり良いものはありませんでした。
もう一つ更に大きいの要因は、設備インフラの違いです。今では、お風呂は各住宅についていますが、その頃の建物で家にお風呂があるというのは少なかったものです。その後リフォームで家にお風呂を付けたりした住まいは多かったようです。古い建物をリノベーションすると、多くの場合、一度設備の改修を行って、キッチンお風呂、などを入れ替えていることが多くあります。

つまり、住宅の設備の陳腐化が一周して、まぁ建替えなくても住めるしという住まいが増えているのも大きな原因と考えられます。
ある意味、ある程度の住宅は、日本中に行き渡ったという事になるでしょう。優先必須項目が少なくなっていることは、住宅産業の成熟の現れだと言えるでしょう。先人の方々の努力の賜物です。
今後は、私達の考え得る住宅の劣化の原因の一つは、高断熱化住宅の内部結露です。

断熱をすると家は劣化しやすくなる

高断熱化すると、家の外と中で温度差がますます激しくなります。住まいは住みやすくなりますが、その温度境界である壁には、かなりの負担が現れます。

人間でも温度差があると風邪をひきやすいのと一緒で、建物も負荷が掛かっているのです。

そうすると壁の中で結露が起きて、躯体を中から劣化させていくことになります。もちろん日本中の優秀な設計者や施工者はしっかり対策をしていますが、断熱化が叫ばれた90年代くらいの建物は、そういった処置の少ないものが多くあります。ある意味、室内の快適性を求める為に躯体が傷んでいる状態です。こういった建物は建替えもしくは、耐震と断熱のリフォームをした方が良いです。

今後、建物は用途的な陳腐化ではなく、躯体的な劣化が大きな原因になってくるでしょう。

参考文献

持  家
新設住宅
着工戸数
対前年
度比
再建築
戸 数
対前年
度比
再建築率
平成7年度 550,544 △ 5.2 186,608 △ 6.6 33.9
636,306 15.6 222,839 19.4 35.0
451,091 △ 29.1 145,788 △ 34.6 32.3
10 438,137 △ 2.9 138,675 △ 4.9 31.7
11 475,632 8.6 143,791 3.7 30.2
12 437,789 △ 8.0 127,641 △ 11.2 29.2
13 377,066 △ 13.9 102,650 △ 19.6 27.2
14 365,507 △ 3.1 90,074 △ 12.3 24.6
15 373,015 2.1 84,527 △ 6.2 22.7
16 367,233 △ 1.6 78,942 △ 6.6 21.5
17 352,577 △ 4.0 74,535 △ 5.6 21.1
18 355,700 0.9 72,428 △ 2.8 20.4
19 311,800 △ 12.3 60,117 △ 17.0 19.3
20 310,670 △ 0.4 57,191 △ 4.9 18.4
21 286,993 △ 7.6 46,458 △ 18.8 16.2
22 308,517 7.5 47,592 2.4 15.4
23 304,822 △ 1.2 48,369 1.6 15.9
24 316,532 3.8 47,707 △ 1.4 15.1
25 352,841 11.5 53,539 12.2 15.2
26 278,221 △ 21.1 37,088 △ 30.7 13.3
27 284,441 2.2 33,771 △ 8.9 11.9
28 291,783 2.6 33,470 △ 0.9 11.5

出展:「住宅着工統計における再建築状況について」(国土交通省)