吹き抜けの寒さ対策は、設計段階から始まります。断熱気密性能を省エネ基準以上にする。

吹き抜けは開放感のある、そして華やかであこがれるデザインの一つです。建築空間の花形の一つといってもいいでしょう。吹き抜けとは、階をまたがって空間をつなげる手法の一つで天井の高さが二層分になり、5mくらいになります。

吹き抜けをイメージするのはどこの国??

吹き抜けといってイメージする国はどこでしょう?多くの人は南国のイメージがあるかもしれません。ハワイ、バリ、グアム、インドネシアなどリゾートといわれる地域で、これらの地域は二階に部屋が無くとも、平屋の勾配天井で二層分の天象高さを有しています。こちらも開放感を感じられます。

吹き抜けの問題は寒さ対策 暖房方法?

吹き抜けは、暖房であっても冷房であっても、上下階で比べたときには、快適性に差がでます。問題は温度ムラです。

冷房はまだましです。冷たい空気は下に下がってくるので、吹き抜けの下にいる人は涼しく快適に過ごせますが、やはり上階にいる場合は下の階よりも熱く感じられます。

思い浮かべやすいのは、ロフトのある家。

ロフトはある意味、吹き抜けの上部に部屋があるようなものです。夏場は、冷房が効かず、屋根の影響をものすごく受けてしまいます。小屋裏収納も夏場は上がれないですよね。

ただ、特に注意する吹き抜けの問題は、暖房です。暖房が非常に厄介。

吹き抜けの部屋の、エアコンを下に向けても部屋は温まりません。

皆さんも体験あるかもしれませんが、エアコンをフルパワーでかけてもなかなか、自分たちのいる場所があったまらない。エアコンはヒートポンプでエネルギーをくみ上げるので効率がよく優秀な暖房器具ですが、あったかい空気を送り出す暖房機器のため、その空気がすぐ上に上がってしまいます。線香をイメージしてみましょう。線香の煙はすぐに上に上がってゆきます。ここに少し息を吹きかけても煙は周りに広がるだけで、あまり下のほうには行きません。もっと下のほうに行かせるために強く吹きかけると、白い煙は無くなってしまいます。寒いので、風量を多くして、温度を上げれば、室内の温度差が大きくなりさらにエアコンの温風は上昇してしまいます。吹き抜けは、どうしても温風の逃げ道ができてしまうので暖房が難しいのです。

ファンヒーターも同じ。出口は床面に近いのでエアコンよりは効果があるが、あったか空気にすれば、ファンヒーターから出た瞬間に上に上がってしまいます。

だったら、吹き抜けの寒さ対策を床暖房でどうですか??

床暖房は、床面があったまるので体感的な暖かさを感じることができます。しかも、温度ムラが出にくいので吹き抜けには合う暖房機器でもあります。しかし床暖房は、立ち上がりが遅く部屋が暖かくなるまでに時間を要してしまいます。しかも、床暖房で部屋全体の暖房を賄おうとすると、敷き込み率を上げなければなりません。よく床暖房のメーカーさんは敷き込み率約60%で部屋全体の暖房を賄えるといっていますが、それは天井高さ2m40cm程度を想定しているので、吹き抜けの場合、容積が大きく負荷もかかるので、なかなか困難になります。

床暖房であれば、+エアコンのように複数使える状態にしておくがベストです。

また暖かい空気を下に戻すようなシーリングファンやサーキュレーターも重要な要素の一つになります。

吹き抜けを設けたいのであれば、設計段階で断熱気密性能をとにかく上げる。

吹き抜けはお話したように、暖かい空気が上階に上がってしまい、下階が寒くなってしまうので、不快な空間になってしまいます。これは暖かい空気が、上階から逃げてしまっているので、下階まで温まらないのが原因です。つまり、どこかから熱が逃げてしまっているので、その逃げ道をふさいであげれば、家全体が暖かくなってきます

吹き抜けの空間では、断熱・気密の性能を上げることが最も重要なことなのです

まずはこの作業をしなければ、どんなに良い暖房機器を入れても効果は少なくなるでしょう。エネルギーの垂れ流し状態になってしまいます

吹き抜けのお話をしましたが、リビングイン階段も同じ原理です。

そして改正省エネ基準では、断熱性能の一つの指針である外皮平均熱貫流率UA値を示しますが、ゼロエネルギーZEH仕様の住まいでも断熱性のは足りないというのが私たちの感覚です。そして冷房時の平均日射取得率にも配慮が必要になります。

このあたりを踏まえ、住まいの温熱環境を考えて見ましょう。

快適な吹き抜けは、ここから始まります。