どうも房総イズムです。今回は、またまた専門的なお話し+現場実演のお話しになります。誰もが心配な構造のお話し。出来てしまうと、壁や天井の中に隠れてしまうので、気になりませんが、それでもとても重要な項目です。今回はいすみの別荘で使用しました。これから新築を検討の方は是非参考にしてください。
もくじ
ピン工法で新築平屋、いすみの家 千葉
千葉では4月で、桜も咲き、温かくなるはずですが、今年は、寒い!!!入学式には桜が無くなっている例年ですが、今年は真冬のような寒さの為、凄く桜が長持ち。。。しかも、天気は晴れ、雨、晴れ、雨の交互。
とは言いつつも、千葉のいすみの家も、ついに棟上げです。いすみの家は、平屋の住まいですが、川沿いにある為、湿気の気になる地域。設計段階からそのお話しがあったので、ビニルクロスを用いず、木を現してデザインしています。
そういった意匠の時には、ピン工法を用います。もちろん多大にコストを掛けられるのであれば様々な選択肢はありますが、メリハリのあるコスト調整で、ピン工法を用いる事になりました。
ピン工法とは(金物工法)
現在、在来木造住宅には、大きく分けて在来工法とピン工法があります。
(伝統工法の様に金物を使わない物は、とりあえず除外しておきます)
在来工法は、
一方ピン工法(金物工法)は
上記の写真にあるように、
在来工法とピン工法の違い
施工的な違い
①現場で金物を付けるか、ピンを打ち込むか。ピン工法は単純なので間違えが起きにくい
②ピン工法は金物の設置まで棟上げと同時に出来るので、スピードが速い。
③ピン工法は、ピンを打ち付けるだけなので、施工が容易で、品質のぶれが少ない。
④在来工法の場合、土台とホールダウンは土台敷きのタイミングで現地で穴を開けるが、ピン工法は、事前に正確にプレカット加工してくるので、特に基礎と柱の接合のホールダウン金物などは、数ミリの精度でアンカーボルトの施工が必要になる。
(つまり基礎屋さんが適当だと、大工さんが非常に困るというわけです)
⑤トラックで現場に運ばれるときには、在来工法は柱梁だけなので沢山積むことができるが、ピン工法の場合金物が邪魔して荷積が少なくなってしまい輸送費が掛かってしまう。
設計的な違い
①在来工法も、ピン工法も、共に試験をした耐力のある金物なので、構造計算的な違いは少ない
(ただし、在来工法は、仕口処理、継手処理で断面欠損が出てしまう一方、ピン工法は、金物の差込だけなので非常に断面欠損が少なく部材の強度が保たれている。)
②在来工法の場合梁を現したり、柱を現すような設計の場合、どの部分に金物が見えてくるか細かく配慮する必要がある。ピン工法は、ピンの穴だけなのでその点の心配は少ない。
③在来工法は、無垢材や集成材など強度や意匠に応じて使用が可能ですが、ピン工法の場合多くは集成材の指定がある場合が多い。一部無垢材を利用できる、ピン工法もありますが、対応プレカット工場が少ない。
コスト的な違い
ピン工法は、輸送費や、プレカット工場の専用機械の設備投資などで、在来工法に比べ価格は高くなる。
大体プレカット代1割程度かなという印象です。
ではピン工法を見てみましょう
先ほどお話ししたように、基礎の精度は非常に重要ですので重点監理が必要です
両サイドにあるのが、土台を繋ぐアンカーボルト、角にあるのが、専用のホールダウン金物接続用のアンカーボルト。これは、ピン工法の指定の金物なので、事前に手配しておきます。この金物が5㎜程度のずれまでで設置が必要なので、しっかり慣れている基礎屋さんで無いと心配なところです。
千葉のいすみの現場では、問題なく施工出来てました。
土台敷きの墨付けを行い、前日までに土台敷きを終わらせておきます。
ピン工法の棟上げ当日
現場には朝からレッカーが到着して順次、施工が始まります
トラックから降ろした、材料です。見ての通り、金物が取りついて現場に運ばれるので、積み込みの量は在来工法に比べると少ないことがわかります。
荷ほどきをしたら、どんどん、番付通りに、柱を立て込みます。
これが、ピン工法の由来ピンを打ち込みます。結構な本数を打つので、手が疲れます。
柱の中はこのような、ピンを受ける金物が入っています。柱に開いた穴と合わせてピンを打ち込みます。
これは梁と柱を接合する部分の写真です。
梁の部分は、耐力に応じて、ピンの本数が多くなってゆきます。また、金物はこのスリットの中に差し込むので非常に断面欠損の少ない工法になっているのがわかります
このように柱についた金物に梁を落とし込みます。
一階部分の梁、柱が据え付け終わったら、建物の水平、垂直をみて、仮の筋違を設置します。二階はこの繰り返しです。
今回の千葉 いすみの別荘は、平屋の勾配天井なので、一階の上は小屋組になります。
なかなか天気のすぐれない日が続いていますが、上棟の日は快晴の天気でした。
あとがき_ピン工法について
墨付けをして大工さんが工場や現場で木造の、きざみ、を行う事は本当にまれになってきました。実際、もう10年以上きざみをやっていないという大工さんだらけだと思います。更に若い人は、もうきざむこともないでしょう。
そして、在来工法のプレカットで、それに慣れたら、金物工法のプレカット、さらに今後は、大規模なパネル工法も出てくるでしょう。
どんどん効率化する事で、現場の間違いは非常に少なくなり、品質が保たれていることも事実です。
では実際、少し前のように現場できざんで家を建てましょうとなった時、10年以上やっていない大工さんの腕は落ちているので、自分たちに自信が無いと言うでしょう。
私達設計も、今では手書きはほとんどありません。もう手書きでは申請書類やデータベースの保存など正直できなくなっているので、今ではCADが必須です。
でも、やっぱり、スケッチを掛ける事や人に伝える為に、ささっと手書きは必要になります。やはりTPOです。
おそらく、新築で木を刻んで建てるという事は今後更に減少すると思いますが、その技術は、リフォーム、リノベーションで活躍してきます。
リフォーム・リノベーションでわざわざプレカットで持ってきても、やはり、現場合わせが必ず出てきます。しかも少量であれば、自分たちで刻んでしまった方が早いですし・・・・
技術と、求められているところを合わせて皆さんに良い建物をつくって頂きたいと思っています。
追伸
棟上げの日は沢山の大工さんが応援にきます。もちろん私達も手伝います。昔ながらの木材をきざんで家づくりをする事は少なくなってきましたが、それでも棟上げは特別な日です。房総イズムは、新しい技術、現場の技術を相互に融合させることが結果的に高品質・ローコストにつながると思っています。専門的な内容でもご質問ありましたらお問い合わせください。