こんにちは房総イズムです。よく聞かれる質問の一つに、この建物は震度どのくらいまで耐えられますか??というものがあります。建物の耐震性を示す指針の一つに、耐震等級というものがあります。耐震等級は数字が上がれば上がるほど、地震に強い家ということになりますが、どのくらいの震度に耐えられますかという質問にはなかなか答えにくいものがあります。今日はその理由と、耐震強度と体感地震の関係性についてお話いたします
結論
震度は被害状況を示す指針だから、周りの家が倒壊するような震度でも、耐震等級の高い家は倒壊しない可能性が高い!!と言えます
もくじ
まず、よく話に出る耐震等級をわかりやすく書きます
耐震等級とは、品確法(住宅品質確保促進法)で定められた基準で、建物の倒壊しにくさを(建物の強さといった方がわかりやすいかもしれません)一般の方でもわかりやすいように、3段階で示した基準になります。数字が高くなるほど倒壊しにくくなります。 下に簡単にわかりやすく書きます
耐震等級1
これは、建築基準法で定められた基準です。建物における最低基準と考えてもらっても良いです。
①数百年に一度発生する地震に対して倒壊・崩壊しない程度(例えば東京なら震度6強~7程度)大地震
②数十年に一度発生する地震に対して損傷しない程度(例えば東京なら震度5程度)中地震
耐震等級2
耐震等級2は、耐震等級1より1.25倍強い建物になります。
正確には、耐震等級1の計算した地震力に1.25倍した地震力に耐えうる計算をしているということです
耐震等級3
耐震等級3は、耐震等級1より1.5倍強い建物になります。
正確には、耐震等級1の計算した地震力に1.5倍した地震力に耐えうる計算をしているということです
耐震等級の基準となる、構造設計は、どのようなものか
耐震等級1のところでお話ししたように、
①倒壊しないように
②損傷しないように
この二点をクリアするように計算するのですが、震度をそのまま計算に使えないので、計算上に用いるのが「標準せん断力係数」という値で計算を行います。
- ①倒壊しないように!!大地震Co=1.0(300~400gal)
- ②損傷しないように!!中地震Co=0.2(80~100gal)
(過去の地震を元に標準せん断力係数Coで表します(カッコ内に対応するガルを示しています詳しくは後程。)
この地震エネルギーが建物に直接加わったと仮定して計算しているのが、これから下で述べる震度との関係性をややこしくしている内容になります。
では、震度とはどういった指針か。耐震等級と震度の関係は!
わかりやすく書いているため、専門的な用語はあまり使っていませんが、震度6とか7などの表現の震度というのは、その地域の人の受ける揺れの感じや、被害の大きさを示す基準です。
決してあなたのいる、ピンポイントの場所の揺れではないことを理解しておきましょう。
皆さんもイメージがあると思いますが、ニュースで言う震度~と今自分が体感した震度の感覚が違うなってことがありませんか。
あれニュースの震度は大きかったけどあんまり揺れなかったなぁ~~。その逆もしかり。
震度というのはその地域で発表されます。気象庁によると、
平成21年10月現在、気象庁が発表する震度情報に活用している観測点は、約4200地点となっています
意外と観測点の分布はまばらで、人口の多いところには観測点が多くありそうです。
揺れ事体は、観測点から離れれば誤差も出るでしょう。また同じでも今住んでいる地盤の固さによっても揺れの感じ方は異なります。
埋立地のような柔らかい地盤の場所では、山地のように固い地盤の場所に比べて揺れは大きくなる傾向にあるため、市町村単位でなくもっと細かく設定するなら、震度は高くなっているということになります。
つまり、建物が直接受ける地震のエネルギーも発表されている震度とは異なることがあるのです。
でもあるし
震度≠建物に加わる地震力
かもしれないということです
このように震度は、地表面の揺れや体感的な指針で、建物に直接加わる地震力の数字ではありません。そのため、耐震等級をこのくらいにすれば、震度いくつに耐えられるとは明確にお話しすることは難しいのです。
もう一つ、マグニチュードと震度の違いは?
マグニチュードも、ニュースで良く聞く言葉の一つです。ではマグニチュードとはどういったものでしょうか。
マグニチュードは、地震そのものの規模を表している表現になります。
地震そのものの規模を表現しているので、指標としては震度よりも科学的ですが、マグニチュードの高さがそのまま体感的な地震の大きさに比例しているということはありません。
その理由としては、震源の位置が関係しています。とても大きな地震が発生したとしても、それが地中深くて、地表面まで距離があったときは、地震の規模は減衰して、体感の地震は小さくなります。
一方、比較的小さな地震でも、地表面に近ければ地震の規模に近いものを感じてしまいます。
ちなみに、大きな災害を出したものでは
新潟中越地震はマグニチュード6.8震源の深さ13.1㎞、
東日本大震災はマグニチュード9.0震源の深さ24 km
といわれています
つまり、私たちの感じる地表面の震度は、マグニチュードと比例するわけではありません。
結果的に建物にかかる地震エネルギーもマグニチュードとの関係性が薄いため耐震等級とマグニチュードのお話をすることが難しくなります。
結論①:その地域の揺れの尺度を示す『震度』と、建物本体に加わるエネルギーで計算している『耐震等級』との関係性を述べることは、難しい
皆さんが、地震対策で耐震設計をしました。そして耐震等級3で地震に強い建物です。
しかし、震度~に耐えられますとはかなり乱暴な言い方になります。
震度は、あくまで地表面や地球に当てはまる尺度で、構造計算の元になる建物単体にかかるエネルギーを表しているわけではありません。そのため異なる数字が出てくる可能性があります。
むしろこの言い方をするなら、例えば、阪神淡路大震災でも倒壊しない構造にしていますということの方がまだ根拠のある言い方になります。過去の地震であれば、震度やマグニチュードやガル、被害の状況などから、建物にかかるエネルギーが推測しやすいということが言えます。
ーーーーーここからは少し難しい内容になりますーーーもう少し知りたい方はどうぞ!ーーーーー
よく専門家が話す、地震のガル(gal)について
ニュースでも、専門家が出てきて、この地震につて詳しく説明すときにガル(gal)という単位が用いられることがあります。ガル(gal)もその場所の地震の大きさを示す指針の一つですが、震度よりももう少し科学的な指針になります。
ガル(gal)は地震の大きさを加速度で示した基準で、ある地震の大きさまでに到達した時間の短さに当たります。
簡単に言うと、
スーパーカーの助手席に乗っているとして、アクセル全開で時速100kmに達したときの体にかかる圧力と、軽自動車でゆっくり時速100㎞に達したときの体にかかる圧力では全然違いますよね。
つまり同じ地震でも、ガツンと来る地震とふわっと来る地震では建物の被害の状況も全く異なってきます。
ちなみに、ガルは加速度で、一定時間内の速度の変化の事です。物が落下するときの加速度が1G=980ガルでこれを上回ると物が浮き始めます。
もし、1000ガルが10秒後にどのくらいの速度になっているかというと
10秒後のスピードが求めるには
1000ガル(cm/s2)×10秒(S)=10000(cm/s)←カイン=100(m/s)
1秒間に100m動くことを意味します
これを時速に直すと(km/h)
100(m/s)×60×60÷1000₌360(km/h)
つまり1000ガルだと、止まってる車が10秒後 360㎞/hになるという感じです
例えば、最大ガルと、ガルに時間を掛けたカインで見てみると、
阪神淡路大震災は約800gal、112カイン(0.14s)
新潟中越地震は2,515gal、148カイン(0.05s)
東日本大震災は2933gal、106カイン(0.036s)
岩手・宮城内陸地震は4022gal、100カイン(0.024s)
と言われています。
カインは、ガルが掛かっていた時間の考え方なので、建物影響は、カインの方が数字と被害が近い感じになります。
ただし、最大加速度ガルが大きいからと言って、震度が大きいとは限りません。震度つまり私たちの体感に近い揺れには、長さも影響を及ぼします。
やはり地震の場所と、震源の深さ、規模など様々要因で、建物の被害の状況は異なっていると言えます。
ガルと震度の関係
約100 ガル以上で震度5強,
約200 ガル以上で震度6弱,
約350 ガル以上で震度6強,
約600 ガル以上で震度7
という数字になっています.すなわち,震度5強と6弱でガルは倍になり,6弱と7ではガルが3倍になっています。ここでも注意したいことは、ガルと震度の関係性です
均一な揺れが数秒間続くと仮定した時、実際の地震波はさまざな周期の波が含まれているので、震度7が加速度で何galに相当すると言えませんが、仮に周期1秒の波が同じ振幅で数秒間続くとすると、震度7の下限に相当する計測震度6.5以上になるためには、南北・東西・上下の3成分の合成値で約600gal以上の加速度が必要です。(出展:気象庁 震度と加速度)
建築基準法を守ると、どのくらいの、ガル(加速度)を想定しているのか
1981年に、「新耐震設計法」ができ、その時に上記に記載した、数百年の一度の地震で倒壊しない強度であり、加え数十年に一度の地震で損傷しない程度の強度に設計することです。
損傷しない程度の強度の計算を最下部に生じる水平力を、自分が支える荷重の0.2倍を標準値としています。
数百年の一度の地震で倒壊しない強度の検討で、最下層での標準値として自分が支える荷重の1.0倍とすることになっています。
基準法で定められている地震力は、震度やマグニチュード、ガルなどの記載はないのですが、これまでの地震被害の経験と研究から、中地震は気象庁の震度階5弱(80~100ガル)大地震は震度階6(300~400ガル)程度の地震を想定しているといわれています。
もちろん、建物に加わるエネルギーで考えているので、あくまで想定の震度やガルになりますが、日本の建築の歴史の中で、関東大震災の地震レベルを参考にしていると考えられます。
結論②、耐震等級で耐えられる震度は、目安に過ぎない。それよりも問題は、木造の住宅の多くは構造計算を行っていないこと
震度やマグニチュード、ガルといった地震の大きさを示す指標が、あたなのお住まいに直接加わる地震エネルギーの数字でない以上、耐震設計をした耐震等級でこのくらいの震度に耐えられますということは難しいと言わざるを得ません。
繰り返しになりますが、建物にかかる地震力は、その建物の建っている地盤や地形にも大きく影響を受けます。
ニュースで伝えられる震度やマグニチュードは地震のことを示しているので、私たちの知りたい建物が受ける地震エネルギーではないことを理解しておくと、耐震等級と、震度の関係性も見えてくるでしょう。
なんにしろ、地盤の良いところにすまいを建てることは、一番リスクの少ないことになると言えます。
総論③震度=被害状況
震度は、7までで10段階あります。それは被害状況によって震度の想定が異なります。つまり、周りの建物がたくさん倒壊していると、震度も高くなります。
耐震等級が高いということは、周りの家が倒れても、自分の家は倒れていないかもしれないという説明が一番しっくりきます。
あとがき
建築基準法に則って耐震等級1の計算をしていない木造住宅は、どの程度耐えられるか不明です
上記の内容は、あくまで建築基準法の構造指針に則った話です。こと、二階建て木造住宅に目を向けると未だに多くの建築物が構造的計算を行っておりません。こういった配慮のない建物こそ地震の影響を受けることになってしまいます。
もし新築住宅を検討しているのであれば、最低限の構造配慮を設計者、建設会社に求めてみましょう。